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第16回 冥王代生命学・地球史年表

「冥王代生命学」について紹介したい。

以前に第13回で生物にふれたことがあるが、私自身は、生物、化学は昔からあまり得意ではない。有機物、inhibitor…うんぬんには少し、仕事にも関係があり、勉強はしたことはあるが。DNA、遺伝子に関したことについても、詳しくない。

ただし、進化には興味がある。純粋に、進化ということが不思議であるから。

「冥王代生命学」丸山茂徳、戎崎俊一、金井昭夫、黒川顕、朝倉書店 2022年

この分野は、生命の誕生を初期の地球(冥王代)環境の全体の研究の中から探求する分野。特に、生物の共通祖先を探求し、冥王代という地球誕生後の初期の40億年前という地球環境に至る。

コモノートというのは全生物の共通の祖先の呼び名である。地球は、人類や哺乳類の惑星ではなく、こうして見ると細菌やバクテリアの惑星であるという方がふさわしい。地球史を10億年単位の時間に分けて、(代、紀、世の分類)4本の地球史年表の線にすると

「地球全史の歩き方」白尾元理、岩波書店2013年 から転載

上の図の4本の縦線に折りたたまれたようになる。時代が若くなるにつれて、10億年単位では表せられなくなるので、紀、世のようにより細分化された区分で表現される。斜めの破線に注意。

化石資料として、現在に残るのが顕生代(5億4000万年前)。斜めの破線で、右の古生代以降の縦線(全体で5億4000万年のスケール)に細分化

新生代(6500万年前) K-Pg大量絶滅で恐竜の時代が終わり、哺乳類の時代のはじめ

鮮新世更新世(合わせて500万年強) 日本でいえば、ユーラシア大陸から分離し日本海が開き日本列島として誕生した後

 このようにして、100万年単位の時代になり

第四紀最後の100万年(類人猿からホモサピエンス) ヒトの歴史が始まる。

顕生代になってはじめて生物の化石が歴史的に現れるということは、それ以前のいつ頃から、多細胞生物やその前の単細胞生物が地球に誕生するのかが問題になる。さらに地球史を遡ると原生代(25億年前から)、太古代(40億年前から)、冥王代(46億年前から)となる。冥王代が地球そのものの誕生になる。進化というものが化石資料から明瞭になる顕生代以降に比較してこれらの三つの代は時間が長い。

地球誕生後の冥王代には地球環境は激しく激変して、その中で生命は誕生した。生命誕生の自然原子炉間欠泉モデル。下2図も同書から。

詳しくは、「冥王代生命学」を参照。この本は科研費補助金新学術領域研究「冥王代生命学の創成」の研究成果をまとめたもので、「全地球史アトラス」という動画

(1) 全地球史アトラス - YouTube

も作成されている。

それが、地球は細菌やバクテリアの惑星である、という話につながる。

もう一冊、ロバート・ヘイゼンの

「地球進化46億年の物語」ロバート・ヘイゼン、ブルーバックス 2014年

の10章では、顕生代(緑の地球、陸上生物圏の出現)まで、明確な4つの代、黒、青、灰色、赤、白、緑(6色)と月、生命の起源と宇宙の鉱物学の視点から説明している。退屈な10億年。Big 6の元素、酸素、ケイ素、Al, Mg, Ca、鉄。

この本での、章の順は地球誕生の始めからの順序。

黒い地球(最初の玄武岩の殻)、青い地球(海洋の形成)、灰色の地球(最初の花崗岩の殻)、赤い地球(光合成と大酸化イベント)、白い地球(全球凍結と温暖化のサイクル)。

化石資料のある顕生代(つまり、古生代以降)の地質・生物史の本はわりに多いが、それ以前の明確な本は貴重だ。11章の未来に関して、もある。

第17回に続く。